ここ数年、APIエコノミーという言葉をよく聞くようになった。これは、APIを使ったビジネスという意味で、企業が持つ多くのサービスやデータをAPIによって外部に公開し、それらを他社が利用することによって、大きな経済圏が作られていくというものだ。

しかしAPIに関してはまだ情報が偏っていたり、技術的な整備がされておらず、企業や個人が使用するには不便な状況だという。

さらに、急速に発展するブロックチェーン技術により、従来のアプリケーションをブロックチェーンベースで構築していく分散型のアプリケーション、Dapp(Decentralized application)へのシフトが急速に進んでいるが、多くの開発者はDappの開発を行うために必要なAPIの入手や、Dappの開発ノウハウなどが不足しているという状況だ。

今回AOSテクノロジーズ株式会社は、日本初のAPI取引所「APIbank.jp」を開設した。最先端のブロックチェーン技術を活用するためのAPIを提供し、Dappの開発支援を行うという。

ソフトウェアの機能を共有するAPI

そもそもAPI(Application Programming Interface)とはどんなものだろうか。簡単に言うと、ソフトウェアの一部をWEB上に公開することによって、誰でも外部から利用することができるようにすること、つまり「ソフトウェアの機能の共有」である。

しかし、公開すると言っても内部のコードまでは公開しないため、使い方の仕様やルールと一緒にまとめてWEB上に公開しているものが一般的である。

APIを導入するメリットとしては、自社サービスの機能をAPIとして公開することで、同じ特徴をもったサービスが開発しやすくなることが挙げられる。それによって、ある機能に特化させたり、さらに使いやすく一部の機能だけ改良することができるのだ。

また、機能がすでにAPIで公開されているため、同じプログラムを作る必要がない。これにより、開発時間の大幅に短縮や開発コストが削減でき、加えて効率的にアプリケーションを制作することができるのである。

現在APIを公開しているのはGoogle、Twitter、Facebook、Netflix、eBayなどをはじめ、多くのサービスがある。

優良APIをカテゴリ別に分類し取引所で一括扱い

今回開設されたAPI取引所は、APIを使って欲しい企業・提供者・ソフト会社とAPI開発者・ビジネス企画者を繋げる流通プラットフォーム。世界に点在しているさまざまな優良APIをカテゴリ別に分類し、取引所で一括して扱うことで、個別にソフト会社とAPI開発者がやり取りをせずに利用することができる。

さらに、開発されたアプリのAPIをAPIbankに登録していくことで、新たなAPIを「探して、試して、使ってみる」ことが容易になり、APIの取引が活性化されるという。

同社では、以下のようなAPIbankの具体的な3つのミッションを挙げている

  • API提供者支援
    API開発アドバイザリー、開発ドキュメントの翻訳・シェア、APIガイドライン開発・シェア、コミュニティの運営
  • APIマーケティング・販促支援
    APIbankやソーシャルによる露出、マーケティング調査データの公開、決済・契約代行、開発コンテスト
  • API開発者支援
    複雑なAPI管理業務の代行、API関連ニュースや新しいAPIの紹介、開発・調査サポート、コミュニティの運営、コンテストなどの開催

また、これらの機能を支えるのがSOBAプラットフォームだという。SOBAは、APIを一元管理し、動作環境を提供するAPI開発プラットフォームだ。

APIをSOBAプラットフォームに登録することで、API開発者が個別にソフト会社やAPI提供者と契約したり、評価テストを行う手間を省力化し、開発効率を高めることができる。

従来のアプリ開発は、開発者が個別にこの作業を行なっていたため、ソフトウェア開発の生産性が著しく低下していた。SOBAプラットフォームは、この無駄を排除するために開発されたという。

透明性の高い環境が構築できるDapp

また、今回のもう一つのキーワードであるDapp(Decentralized Apps)とは、分散型アプリケーションのことだ。

従来のアプリケーションは、サーバーを主体に管理されることで動作をしている。しかし、このような中央集中型のアプリは、単一の障害に弱く、不透明性が高いという問題点がある。

これに対してDappは、ブロックチェーンの分散型台帳技術により、ネットワーク全体に広がるサーバーとコミュニティにより共同的に管理されていくという特徴がある。これにより、単一障害点がなく、過去のデータを改ざんすることもできない透明性の高い環境が構築できるのだ。

最初に開発されたDappがビットコインとなるが、現在では、さまざまな従来型アプリのDappへの書き換え作業が進んでいる。開発されたDappのAPIがAPIbankに登録されて利用されていくことで、Dappの経済圏のさらなる拡大が期待できるのだ。

API普及へ一石を投じるか

独立系ITコンサルティング・調査会社である株式会社アイ・ティ・アールの予測によると、国内API管理市場は高成長しており、2020年度には15億円に達するという。

今回のAPIbankが市場拡大へ一石を投じるか、期待したい。

img: PR TIMES