現代社会ではスマホがインフラとなり、1人1台以上持っていることが当たり前となっている。そこでは世界と繋がることができ、必要な情報を必要なだけ獲得することが可能だ。

2020年にはプログラミング教育を必修化するといわれているが、日本の教育現場の現状を見ると、一昔前に比べてIT化されてきているとはいえ、ITを使用した教育方法というものはまだまだ未発達な状況なのはいうまでもないだろう。

文部科学省が2017年に行なった「学校におけるICT環境整備の在り方に関する有識者会議(第5回)」によると、「教育用コンピュータ1台当たり児童生徒数3.6人/台」という目標に対して、平均するとまだ5.3人/台程度という結果となっている。

自治体の結果を見てみれば、普通教室への整備台数が平均5台以下が98%以上となっており、普通教室への教育用コンピュータの普及がほとんど進んでいないことがわかる。

この現状の問題点としてはネットワーク環境の整備など、さまざまあるが、コストという面も大きいだろう。

そのようななか、2018年4月より

  • 東京都小金井市教育委員会
  • NTTコミュニケーションズ株式会社
  • 凸版印刷株式会社
  • 株式会社コードタクト
  • NPO法人eboard

の5者は、総務省が推進する「教育クラウド・プラットフォーム」を学校で円滑に活用するための「次世代学校ICT環境」のあり方を整理することを目的として、総務省の「次世代学校ICT環境」の整備に向けた実証に参画し、クラウドや低価格タブレットを活用した授業を開始するとしている。

クラウドと低価格タブレットを活用し、「コスト軽減モデル」を検証

今回の検証の目的としては、上記に記したように総務省が推進する「教育クラウド・プラットフォーム」を学校で円滑に活用するための「次世代学校ICT環境」のあり方を整理することにある。

「教育クラウド・プラットフォーム」とは、低コスト導入・運用可能なクラウド技術を活用したプラットフォームであり、生徒・教員などが多種多様なデジタル教材やツールをいつでもどこでも利用できることとしている。

小金井市が参画する理由としては、小金井市が「ICTを活用して子供たちの個性と創造力を伸ばす教育を実現し、国際社会に生きる日本人を育成する教育」を推進しているということが背景にあるようだ。小金井市以外の4社はこの検証を通して「コスト軽減モデル」について取り組む。その結果として、得られたノウハウを小金井市の全小中学校へと展開する予定だ。

またこの検証では、先のコスト「軽減モデル」だけでなく、「ネットワーク円滑化モデル」、「先端技術(EdTech)活用モデル」という3つのモデルによって行われるという。

実証モデルの内容

学校教育におけるICT環境の整備コストの65%は、児童生徒に配布するタブレットなどの情報端末の整備、校内に設置しているデジタル教材用サーバーの保守・運用コストだとされており、これにあてられる予算は自治体から捻出されるもののため、そのコストが自治体に大きな負担をかけてしまう。またメンテナンスや運用していくことを考えると、教員に対して、今までになかった負担がかかる。

この状況から、本モデルは「クラウドサービスの活用による校内サーバーレス化」と「日本初となる低価格タブレットの全校導入と再利用端末の活用」を実施するとしている。

凸版印刷株式会社、株式会社コードタクト、NPO法人eboardの3社はそれぞれデジタル教材を提供している。提供教材は以下の通りだ。

  • 凸版印刷
    個別学習支援システム「やるKey」の提供
  • コードタクト
    授業支援システム「スクールタクト」の提供
  • eboard
    個別学習支援システム「eboard」の提供

小金井市は、タブレットを使用し、NTT Comが提供する教育クラウドプラットフォームサービス「まなびポケット」上から上記のデジタル教材を活用した授業を行うとしており、それによって各学校に現在設置されている教材配信用サーバーを不要とし、導入コスト / 外部に委託している運用・保守コストの30%削減を目指す。

そしてタブレットを導入することで、生徒自らが調べたり考えたりすることの実践を行い、日本のこれまでの教育スタイルである「先生から生徒への一方通行」を打破し、「生徒が主体的に学ぶ」スタイルを確立しようというものだ。

タブレットの導入は、先ほどのサーバー、運用・保守などと同じくコスト面に大きな課題を抱えていた。そこで小金井市は、教育現場で高い評価を得ているGoogle社 ChromebookTM を日本初の試みとなる「自治体予算で全校導入」することを決定した。また再利用端末を併用することでさらなるコストカットと、全生徒が端末利用が可能になる環境を整える。

またChromebookTMは、教育機関において資料作成に便利な「G Suite for EducationTM」、データを保管する「Googleドライブ」が無償利用可能な特長を持っているため、従来端末と比べた場合、導入・運用コストの40%軽減を目指すことができる。

今後の教育の鍵となるICT化

今の時代、ついこの間まで新しかったものが古いものになっていくスピードが昔に比べてものすごく早くなっている。それはテクノロジーの進化が日進月歩であることを示しているし、その恩恵を受けられるということ自体は私たちにとって生活を豊かにしてくれるものだ。

しかし、だからこそ子供達への教育が遅れてしまうことは、今の子供達が大人になった時の生き方を決定づけてしまう要因になりかねない。それは教育の内容だけではなく、教育形態も大きく関わってくる部分だろう。これからのさらなるグローバル化を考えれば、なおさら強化していかなければいけないはずだ。

今の子供達はもちろん、その親世代であるミレニアル世代はデジタルネイティブと呼ばれる世代のため、今回のようなICTを活用した教育への抵抗感というものは薄い。一度運用が始まってしまえば、飲み込みのスピードは早いと予測されるため、それを実現する今回のような取り組みが次々とスピード感を持って登場することに期待したい。

img: PR TIMES