『ハウス・オブ・カード 野望の階段』や『DEVILMAN crybaby』、『テラスハウス』などのエンターテインメントの印象が強い「Netflix」だが、ビジネスにおいて有益な視点を提供するような作品も多数配信されている。

テクノロジーや経済、デザインなど幅広い分野で気づきを与えてくれる作品は、週末のbinge-watching(ビンジ・ウォッチング)に対する罪悪感も少しは軽減してくれるかもしれない。

今回はAMPから「ビジネスインスピレーション」につながるNetfixの6作品を推薦しよう。

金融の仕組みを変革する技術の全容を描く『ビットコイン』

仮想通貨 ビットコイン』は、仮想通貨の代表格であるビットコインの歴史を辿るドキュメンタリー作品だ。そもそも通貨とは何であるかという定義から出発し、ビットコインが革新的である理由を、専門家や関係者の証言を元に解き明かしていく。

要となるブロックチェーン技術の成り立ちから、仮想通貨に関する法整備の複雑さ、ビットコインの交換所「マウントゴックス」の破綻に至るまで。急速に発展するフィンテックの現状を理解する上で欠かせないトピックが網羅されている。

仮想通貨 ビットコイン >>> Netflix

クリエイティビティを発揮する術が詰まった『アート・オブ・デザイン』

アート・オブ・デザイン』はデザイナーたちの姿を追うドキュメンタリーシリーズだ。イラストレーターのクリストフ・ニーマン氏や自動車デザイナーのラルフ・ジル氏、舞台デザイナーのエズ・デブリン氏など、多様な業界で最前線を走る面々を各エピソードにつき一人ずつ取り上げていく。

本作品では、彼らが優れたデザインを生み出すために試行錯誤を重ねる様子が、本人のナレーションとともに紹介される。限られた時間の中で優れた成果を出すための習慣づくりや、妥協せずに課題解決に挑む姿勢。そこで語られる仕事哲学の数々は、デザイナー以外のあらゆるビジネスパーソンにも示唆を与えてくれる。

アート・オブ・デザイン >>> Netflix

開発秘話から商売のシビアさを描く『ボクらを作ったオモチャたち』

ボクらを作ったオモチャたち』は、スターウォーズの玩具シリーズやバービー、G.I.ジョーなど、アメリカの国民的オモチャの舞台裏に迫るドキュメンタリー作品だ。時代の変化やニーズを捉え、試行錯誤を重ねる開発者たちの姿が描かれている。

しかし本作品を構成するのは開発者の美談だけではない。ライセンス契約をめぐる交渉や商品の権利を争う訴訟など、開発の背後で繰り広げられる生々しい大人のドラマも取り上げている。

そのやり方の是非はさておき、利益のために最善を尽くす人々の姿からは、ビジネスに欠かせない覚悟が学び取れるかもしれない。

ボクらを作ったオモチャたち >>> Netflix

米国経済の行き詰まりを解く鍵を探す『ロバート・ライシュ: 資本主義の救済』

ロバート・ライシュ: 資本主義の救済』はクリントン政権で労働長官を務めたロバート・ライシュ氏が、アメリカ経済のあり方を問い直していく様子を追うドキュメンタリーだ。本作品ではアニメーションやインタビュー、講演の様子を交えながら、アメリカにおいて中間層が経済的に困窮している理由を丁寧に紐解いていく。

繰り返し語られるのは政府の介入を嫌い、自由な市場を尊ぶアメリカ経済への疑問だ。一部の大企業が富を独占している状況を脱し、「大衆のためのルール」を構築するために声を上げる重要性を説く。

劇中でライシュ氏が述べる「我々がルールを変えるのだ」という言葉は、アメリカ型の資本主義において経済成長を遂げた日本の私たちにも突きつけられている。

ロバート・ライシュ: 資本主義の救済 >>> Netflix

人間に勝利した最強の囲碁AIの裏側に迫る『アルファ碁』

2016年にGoogleのAI『アルファ碁』が、世界最強の囲碁棋士と評されたイ・セドル氏に勝利した。チェスや将棋よりも学習が難解な囲碁においても、AIが人間を打ち負かしたというニュースは、世界中に大きな衝撃と共に受け止められた。本作品はその対局の様子を丁寧に追ったドキュメンタリー映画だ。

対局からは人間とAIの思考の違いが浮かび上がる。イ・セドル氏がかつて勝利を収めた際の「最後の一手」をアルファ碁は正しく評価できなかった一方、開発者が「不必要」に感じたアルファ碁の手が最終的にはイ・セドル氏を打ち負かしたのだ。

「AIが人間にとって脅威となる」といったセンセーショナルな語りが溢れている一方、AIが具体的にどのように思考し、いかに判断を下すのかが語られる機会は多くない。本作品で繰り広げられる対局から、そうした問いに対する答えの一端が掴めるはずだ。

アルファ碁 >>> Netflix

“テクノロジー中心社会”で語るべき論点を示す『ブラックミラー』

ブラックミラー』は、近未来においてテクノロジーが人間社会にどのような変容をもたらすかを風刺的に描いた一話完結型のドラマシリーズだ。

各エピソードではSNSやAI、ARゲームなどのテクノロジーが物語の鍵となる。たとえば、シーズン3第1話の『ランク社会』では、とあるアプリ上での評価が現実社会での評価と直結する社会を描き、SNSの評価にとらわれる心理や、人間の価値が単一の指標で可視化されてしまう危うさを示している。

優れたテクノロジーが人間の弱さや欲望と結びついたときにどのような課題が起こり得るのか。作り手が提示するほんの少し先の未来の姿からは、わたしたちがテクノロジーを扱う上で向き合わざるを得ない課題を教えてくれる。

ブラックミラー >>> Netflix

Netflixは今年だけでも700作品ものオリジナル作品を制作すると述べている。さらに先日、同社が元アメリカ大統領のバラク・オバマ氏と、番組制作に向けた協議を進めていると報じられた。今後も示唆に富んだ骨太な作品を届けてくれることに期待したい。

img : Netflix