2015年の1兆9,000億ドル(約212兆円)から2021年には3兆ドル(約336兆円)に達すると見込まれているムスリム市場の消費額(トムソン・ロイター)。

ムスリム人口の増加と所得水準の高まりにともない、ムスリム経済は世界平均を上回るペースで成長を続けている。

国際通貨基金(IMF)によると、イスラム協力機構(OIC)加盟国は2015~2021年にかけて平均4.12%の経済成長となる見込みだ。その他地域の平均成長率は3.6%という。2015年OIC57カ国の総GDPは17兆ドル(約1900兆円)と世界全体の15%を占めていた。

ムスリム経済の好調はイスラム金融の拡大につながっている。

トムソン・ロイターによると、2015年イスラム金融の資産総額は2兆ドル(約224兆円)だったが、2016年には2兆2,000億ドル(約246兆円)に増加した。イスラム金融資産には、イスラム銀行資産、タカフル(イスラム保険)、スクーク(イスラム債券)、イスラムファンド、その他イスラム金融機関の資産が含まれている。2020年には3兆2,000億ドル(約358兆円)、2022年には3兆8,000億ドル(約425兆円)に拡大する見込みだ。

拡大するイスラムマネーを取り込むため世界各国ではシャリア(イスラム教の規範や法)に即した金融プロダクトやスキームが登場しており、イスラム金融の一層の拡大を後押ししている。

シャリア指数とマクロイスラム金融、イスラム金融ハブはどこか?

アジア太平洋地域の金融ハブと呼ばれるシンガポールの証券取引所SGXでは2018年10月、同取引所に上場しシャリアに適合する48銘柄で構成される「FTSE・STシンガポール・シャリア指数」が導入された。

シンガポール地元紙ストレーツ・タイムズによると、拡大の一途をたどるイスラム金融では、シャリアに即した資産運用ツールの需要が高まっており、その需要に応えるために新たなシャリア指数が導入された。

SGXでは2006年に「FTSE・SGXアジア100」という別のシャリア指数が導入されたが、それ以来のシャリア指数導入となる。近年イスラム金融がシンガポールでも無視できないほど大きな影響力を持ち始めていることを示す象徴的な施策としてみられている。


シンガポール証券取引所(SGX)

今回導入されたシャリア指数には、シンガポール通信最大手シングテル、政府系複合企業ケッペル、シンガポール航空、同国メディア最大手SPHなどが含まれている。

シャリア指数の構成銘柄の選定では、イスラム・コンサルティング大手Yasaarが審査を実施。事業活動などの定性要因と財務比率などの定量要因がともにシャリアに適合しているのかが審査される。

事業活動に関しては、非イスラム金融、アルコール、豚肉食品、ギャンブル、武器、成人向け娯楽などシャリアに適合しない分野からの売上が総売上の5%を超える場合除外される。

また、イスラム金融では利子の授受が禁じられていることから、利子の発生が見込まれる財務体制の場合も除外される。たとえば、総資産に占めるキャッシュ/有利子証券の割合が33.33%を超える場合などだ。

このような株式指数は投資ファンドがベンチマークとして活用することになる。ここでイスラム金融投資ファンドの動向について少し触れておきたい。

トムソン・ロイターによると、2015年のイスラム・ファンド資産評価額は664億ドル(約8兆円)だった。

AsianInvestorの「イスラム・ファンド-トップ50ランキング」では、どの国でイスラム・ファンドが活況しているのかが明確に現れている。

このランキングによると、2016年のトップ50のうち70%以上がサウジアラビアとマレーシアのファンドで占められていることが明らかになったのだ。サウジアラビアのイスラム・ファンドが占める割合は37%、マレーシアは34%だった。

成長率ではマレーシアに軍配が上がった。2016年マレーシアのイスラム・ファンドの運用資産額は前年比11.6%増となり、222億3,000万ドル(約2兆5,000億円)となった。一方、サウジアラビアのイスラム・ファンドは前年比6.9%減の241億ドル(約2兆7,000億円)だった。

マレーシアでは、大型年金基金の従業員積立基金(EPF)が2017年からシャリア適合のポートフォリオを導入したほか、公務員年金基金KWAPがポートフォリオすべてをシャリアに適合させる計画を明らかにしており、今後もイスラム・ファンドの拡大が見込まれている。

このほか2016年はパキスタンのイスラム・ファンドの成長率が著しく、2015年の7億7,000万ドル(約860億円)から2016年には14億2,000万ドル(約1,600億円)と前年比で100%近い伸びをみせた。

これらは機関投資家の話であるが、ムスリム個人投資家向けにもいくつかの投資サービスが登場している。

英国では2018年8月、Wahed Investが金融当局FCA(金融行動監督機構)の認可を受けた同国初のハラル・ロボアドバイザーをローンチ。同社の調査によると、非イスラム金融サービスを通じた投資活動ができず疎外感を感じている英国在住のムスリムが多いことが判明。そのニーズに応えるためにローンチされた個人ムスリム投資家向けのサービスだ。


Wahed Investウェブサイト

英国でのローンチに先立つ2017年6月には米国でサービスを開始している。最低投資金額は100ドル、投資先にはスクーク(イスラム債券)やゴールドのほか、シャリアETFやシャリア指数が含まれている。

シャリアに適合するという意味の「ハラル」は食品だけでなく、ファッションやコスメ分野でも広く適用されるようになってきている。当初はムスリム消費者を意識したものだったが、エシカル消費意識の高まりにともない、非ムスリムにも認知され始めているといわれている。

同様に投資分野でも「エシカル投資」という言葉が聞かれるようになっており、今後シャリア指数やハラル・ロボアドバイザーなどを通じてエシカル投資が盛り上がりをみせるかもしれない。

文:細谷元(Livit