帝国データバンクでは、2018年9月13日~9月30日、「就活ルール」に関する企業の意識調査を実施。調査対象は全国2万3,101社で、有効回答企業数はそのうち42.2%にあたる9,746社となっている。

主な調査結果の要旨は以下のとおりだった。

  • 就活ルール廃止については、賛成23.5%・反対24.5%と拮抗。一方で最も多かったのは「分からない」との回答。現時点で判断しかねている企業が多く存在していることがわかった。
  • 業界別では、サービス業が就活ルール廃止「賛成」の割合が約3割で最も多い。業種別では、「人材派遣・紹介」「情報サービス」といったサービス業の業種において「賛成」の割合が多かった。
  • 従業員別では、「51~100 人」、「101~300 人」、「301~1,000 人」の企業で「反対」が約3割となり「賛成」を上回った。中堅規模の企業において、就活ルールを廃止する危機感が高い傾向がみられた。

企業側は賛否が拮抗し、「分からない」との回答も半数に上る

経団連が就活ルール廃止を含めた見直しを提起するなか、就活ルール廃止の賛否を各企業に聞いたところ、賛成「23.5%」・反対「24.5%」で拮抗。その一方で、「分からない」と回答した企業が全体の半数以上(52.0%)をしめており、就活ルール廃止の賛否を決めかねている企業が多いことがわかった。

賛成と答えた理由の一部は以下のとおり。

  • 「就活ルールは事実上形骸化しており無意味なため、廃止が妥当」(事業サービス、東京都)
  • 「本来採用側(企業)が日程を決めるのでなくて、学校側が生徒・学生の勉学・卒論・単位を含めて決めるべき」(ソフト受託開発、愛知県)
  • 「新卒採用を行っていないので直ちに影響はないと考えるが、年ごとにルールが変更になるのは学生としても企業としても負担が大きい。むしろ学生や企業の自主的な判断に任せるのがよいのではないか」(木材チップ製造、大分県)

一方、反対と答えた理由としては、以下のような回答があった。

  • 「中小企業はある一定のルールがないと戸惑い、新卒学生を容易に集められないと考えられる」(建築工事、山形県)
  • 「就活ルールの廃止で大手企業の青田買いが一層加速し、中小企業の採用が一層厳し
    くなる恐れがある。また、学生が就活に追われる期間が非常に長くなる可能性が高い」(広告代理、神奈川県)
  • 「就活ルールが廃止になり年中採用業務が発生することで、結果的に人件費のアップに繋がる」(磨棒鋼製造、愛知県)

このように採用活動が困難になることや、学生が勉強する時間が少なくなること、採用業務のコスト増大についての不安が多く上がった。

「分からない」と答えた企業からは、その理由について以下のような回答があがった。

  • 「採用活動のみに専念できる要員がいないため、就活ルールが廃止になることで年中採用業務が発生する事は、結果的に人件費のアップに繋がる」(磨棒鋼製造、愛知県)
  • 「就活ルールが変わろうと、地場の中小企業にはそれほど影響はない」(一般管工事、茨城県)

業界別でみると「サービス」が最も賛成の割合が高い

全ての業界で「分からない」との回答が多かった一方、賛否の割合は業界によってそれぞれだった。「農・林・水産」「金融」「建設」「不動産」「運輸・倉庫」「サービス」の6業界では賛成が反対を上回り、特に「サービス」は賛成の割合が29.5%で最も高かった。

反対が賛成を上回った業界は、「製造」「卸売」「小売」の3つだった。なかでも「小売」は反対が26.4%で最も高く、就活ルール廃止への危機感が強いことがうかがえる。

就活ルール廃止の賛否に関し、賛成と答えた割合が高かった業界は「医薬品・日用雑貨品小売」(40.9%)がトップ。「人材派遣・紹介」、「情報サービス」、「娯楽サービス」が続き、上位を「サービス」業界が占める結果となった。

帝国データバンクは、「サービス」では、以前から新卒採用だけでなく専門的な能力をもった人材を中途採用する雇用方針がみられ、採用体系が多様化していることも「賛成」の割合が高くなった要因と考えられると見解を示している。

たいして反対と回答した企業が多い業種をみると、「教育サービス」(43.5%)が最も高く、百貨店・スーパーといった「各種商品小売」(40.4%)、「専門サービス」(32.5%)が続いた。帝国データバンクは、「サービス」で反対の割合が相応に高く、同業界が就活ルールに過敏に反応している様子がうかがえると話している。

従業員数別でみると「101~300 人」の企業で反対の割合が最も高い

従業員別では、「5人以下」「6~20 人」「21~50 人」および「1,000 人超」の企業で、就活ルール廃止に賛成が反対を若干ではあるが上回った。たいして「51~100 人」「101~300 人」「301~1,000 人」の企業では反対が賛成を上回り、分からないという回答が半数以下との結果になった。特に「101~300人」の企業では反対が3割を超えた。

このことから、帝国データバンクは、従業員51人から1,000人以下の企業が就活ルール廃止に強い危機感を持っている傾向が明らかになったと見解を示している。

<参照元>
「賛否拮抗、ルール廃止に賛成 23.5%、反対 24.5%」就活ルール」に関する企業の意識調査(2018年)
帝国データバンク