6月30日、SDGインデックスから最新レポート「Sustainable Development Report 2020」が発行された。

その中の項目では、今回のコロナパンデミックでの各国の経済へのインパクトとコロナ対応についての評価がされており、韓国が一番経済被害が少なく対処し、ラトビアとオーストラリアがそれに続いていると発表された。

レポートでは5月中旬までの時点では、OECD諸国の中でもアメリカや西欧などのトップ先進国と呼ばれる国々は死亡率とともに経済被害も大きく、日本も含むアジアや欧州でも小国はその被害を少なく食い止めたと分析されている。

今回は第二波も叫ばれているコロナに対し、このレポートに基づいて、今までの対策トップ国とワースト国々の違いについて分析してみたい。

各国比較のための3つの指標

この調査は2020年3月4日から5月12日までのコロナ初期期間をカバーした、OECDの中の対象国33カ国を比較して構成された。諸国で取られた初期のパンデミック対策には、かなり大きなばらつきがあった。それを比較をするために、以下の3つの指標が適用された。

まず1つ目は死亡率。これは100万人あたりのコロナで死亡した人の数を表す。しかしこの数には均一性がなく、病院での死しかカウントしない国、コロナで陽性と判明した人しか死亡数に入れない国もあれば、陽性でなくともコロナで死亡だろうと判断されてカウントする国もある。このように報告基準が各国によって大きく異なるため、国をまたいで直接比較することは非常に困難であるものの、各国で報告されている数を比較している。

 2番目は、「実効生殖率(ERR)」と疫学では呼ばれる、初期段階でのパンデミックがどれだけ抑制(または拡散)されたかの範囲の測定だ。 有効な生殖率は、感染性の個人が感受性の高い個人に伝染する感染の平均数として定義される。ERR<1は効果的な抑制を示し、ERR>1は進行中の流行状態を示す。

3番目の指標は、パンデミックの抑制効率(ECE)。 ERRを1未満に下げる施策で最も顕著に取られたのがロックダウン(都市封鎖)だったが、この方法は経済と日常生活に多大な被害を及ぼすことは明白だった。

これを避けるため、韓国など一部の国では、より的を絞った政策でERRを下げてきた。例えば、感染した個人の隔離または検疫、連絡先の追跡、保菌者にさらされた人々の検疫、およびフェイスマスクの着用などの衛生習慣の改善を強調するより集中した戦略だ。このようなターゲットを絞った手段により、上位国はパンデミックを最小限の経済的コストで抑えることができ、パンデミックの抑制効率(ECE)が高いといえる。

これら3つの指標が測定され、レポートでは「Covid Index」としてパフォーマンスが総合評価された。

ランキングの結果と数値

ランキングの各数値は以下の表にまとめられている。

1つ目の指標の死亡数は、オーストラリア、日本、韓国、ニュージーランドなどの国では、100万人あたり10人未満のままであると報告されている。一方、ベルギー、フランス、ドイツ、スウェーデン、および米国を含む他のOECD諸国では、死亡は人口100万人あたり100人を超え、場合によっては何倍も多かった。

2つ目の実効生殖率(ERR)では、韓国やニュージーランドなどの国が3月と4月の間にウイルスの感染を1.0以内で抑制した一方、他国ではERRの平均が1.0をはるかに超えるという流行病に至っている。これには、日本も含み、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカなど多くの国が挙げられている。

3つ目のパンデミックの抑制効率(ECE)では、韓国が断トツに首位だった。前述のようなターゲットを絞った手段により、上位国はパンデミックを最小限の経済的コストで抑えることができた。

しかし、イタリア、スペイン、アメリカなどの国々では、より経済的でコストのかかる経済的封鎖のアプローチに頼らざるを得なかった。長期にわたる封鎖は、マスクなどの個人用防護具(PPE)が不足しており検査や病院の集中治療能力が低い国にとってはおそらく正しい政策対応だったといわれているため、これらの国々での対応は必要以上に経済に打撃を与えたといえる。

総合したCovid Indexは、韓国を筆頭に、アジア太平洋地域はおしなべて高い評価を受けた。3位にオーストラリア、6位に日本、9位にニュージーランドなどが続いた。

なぜ韓国は首位となり、西欧やアメリカが最下位を占めたのか

一概に、トップとなった韓国の取り組みは、質の高い公衆衛生システムによるところが多かった、とレポートでは分析されている。

その初期の取り組みは、韓国政府からの公式資料にも記されており、韓国は、中国でのコロナ流行が伝わった最初の報道から即座に警戒し、国民に警鐘を鳴らしただけではなく、バ​​イオテクノロジー企業がテストを急速に開発したところが大きかった。

中国の科学者がコロナのゲノムを投稿してからわずか3週間後の2月4日に、韓国企業KogeneBiotechは効果的な診断キットを開発し、他の5社もすぐ後に続いたという。さらには国内でICTが様々な方法で使用され、政府からの緊急通知、Covid-19に感染した個人がアクセスしたウイルスの「ホットスポット」を個人に知らせる連絡先追跡アプリ、遠隔学習カリキュラムとプロトコルを開発、企業へのアドバイスの提供など、多くのアプリケーションが数週間以内に開発され配備された。

反対に、人口規模でみて韓国と日本を除いた人口が5,000万人を超えるOECD諸国は、かなり痛手を追っている。ドイツは19位でOECDの大国の中では最も良いほうで、次にトルコが26位となっている。アメリカは28位、イタリア、フランス、イギリスと続き、最下位はスペインであった。

これらの大国は疑うところなく、パンデミックの早い段階に多くの感染した旅行者を受け入れてしまっていたという事実がある。旅行のハブである主要国は、早い段階で具体的なコロナ対策ができず、中国やそこへ訪れた旅行者の流入を防ぐことができなかった。さらに、これらの国は国境を越えた感染だけでなく、地域内での感染や制御レベルが低いことも証明された。

人口と面積規模の大きいアメリカは、全国的な封鎖への動きがなく、 決定は主に州とその知事に任されていたため、ほとんどの州が3月中旬に部分的なロックダウンを導入したが、5月上旬までには解除し始めた。いずれにしても、封鎖の遵守は明らかに不均一であり、アメリカは6月中旬から7月中旬である現在まで、再度感染者数が急上昇している。

アメリカや西欧・南欧など、最も裕福な国の大半が、コロナの流行病を十分な警告があったとしても阻止できないという結果となった。

「アジア・オセアニア地域の国々は、他の国々よりも効果的にCovid-19の発生を管理している。状況は依然として変化しているが、地政学的および経済的な世界の重心が北大西洋地域からアジア太平洋地域へ移行するという事実が、危機によって加速される可能性もある」とSustainable Development Report 2020のエグゼクティブサマリーでも伝えている。

この研究では、パンデミックが始まってから数カ月のみの2020年3~5月、そして世界共通の指標がない状態で、国をまたいで考慮した研究である。ただ、誤差はあるにしてもこのパンデミックにおいて各国が互いに学び合うことが不可欠であるため、国および地方の政策立案者の間でのベストプラクティスと学びを加速させていく必要がある。予防プログラムへの医療の準備と、回復力を追跡するために、今後もより適切な対策とレポートに敏感である必要がある。

文:米山怜子
編集:岡徳之(Livit