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ヴィーガン化の波は食以外にも──ファッションやスポーツにも起きている消費の変化

ユースカルチャーを代表する領域として、ファッションと音楽は常に結びついてきた。しかし昨今、両者の乖離を囁く声も聞こえ始めている。

例えば「ヒップホップ=ダボダボの服」というイメージが過去のものであることは、昨今のラッパーのスタイルを見れば誰もが一目で分かるだろう。

彼らはスキニーなジーンズを穿いたり「俺のラフシモンズに触るな」と歌うなど、これまでのような画一的で、ともすればコスプレ的とも言えるユニフォーム感を排除している。これは多様性が当たり前となっている現代を象徴する流れかもしれない。

しかし、そんな時代でもクラシカルでシンボリックなアイコンは色あせることない。むしろワンポイントのアクセントとして、その揺るぎない価値が逆に注目されると言ってもいいだろう。ニューエラのキャップ、アディダスのジャージ、ヴァンズのスニーカーといったアイテムがその代表格だろうか。

とはいえ、変わらないものはない。そうしたアイコン的なアイテムも少なからず時代に合わせたアップデートは施されているものなのだ。

ロックカルチャーを象徴したレザー。そのイメージは過去のものか?

スキンズからモッズ、パンクスなど、主にロックの世界においてアイコン的アイテムとして愛されてきたシューズブランドが「ドクターマーチン(Dr. Martens)」だ。光沢のあるレザーと無骨ながらもスタイリッシュなフォルムは、多くのミュージシャンとそのファンを魅了し続けてきた。

そんな同ブランドが2017年9月から新たにリリースした新作シューズが「VEGAN COLLECTION」だ。

その名の通り「動物性の素材を一切使用していないヴィーガン・フレンドリーなコレクション」であり、「エアクッションソールとイエローステッチはそのままに、アッパーには耐久性の高いヴィーガンレザーを採用」しているのだという。

定番を始め3モデルをヴィーガンレザーで再構築したこのコレクション、つまりは「合皮モデル」ということではあるのだが、これまでレザーシューズやブーツを製造・販売し続けてきた同社としては画期的かつ斬新な取り組みと言えるのではないだろうか。

そして実際のところポール・マッカートニーや、レディオヘッドのトム・ヨークなど、海外のミュージシャンにベジタリアンが多いのは事実。意外なようではあるが、時代に合ったプロダクトかもしれない。

フーリガンなイメージのサッカーにも押し寄せる多様化の波

イギリスにおいてヴィーガンの人口が過去10年間で360%増加したということからも分かる通り、畜産業がもたらす環境問題への影響や、健康意識の高まりから、世界的にベジタリアンやヴィーガンは盛り上がりを見せている。

そのムーブメントはベジタリアンとはイメージが結びつきにくいサッカーにも及んでいる。イングランド南西部グロスターシャー州にあるネイルズワースを拠点とする「フォレスト・グリーン・ローバーズ」のホームスタジアムは、なんとヴィーガンスタジアムで、サッカー観戦に欠かすことのできない定番フードの数々が全てヴィーガン仕様で販売されているのだという

ロックやサッカーなどのカルチャーとヴィーガンは、一見、程遠い分野のように見えるかもしれない。しかし、ドクターマーチンやサッカースタジアムのように、ヴィーガンの盛り上がりはそうしたステレオタイプを既に超えつつあるのかもしれない。

「ヴィーガン好き」をクラスタとして捉えると、企業のマーケティング活動におけるヒントが見えてくる。以前、さまざまな場所を、映画を上映するマイクロシアターに変えるプラットフォーム「popcorn」を紹介した。

同サービスは、ミニシアターで上映されるような映画好きのコミュニティを形成している。似た興味関心を持つ人々のコミュニティが形成されれば、企業はそのコミュニティをマーケティング・チャネルとして活用できるかもしれない。

同様に「ヴィーガン好き」というクラスタは、企業がアプローチする対象になり得る。ドクターマーチンやサッカースタジアムの事例からは、企業が「ヴィーガン好き」へのアプローチにビジネスチャンスを見出していることが読み取れるだろう。

img : Dr.Martens

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